コーヒーと失恋話 連載第8回

霧ヶ峰 富士見台

 みなさんお久しぶりです! 連載第8回目は記念すべきはじめての遠征回!

 

 山登り好きのモシャカフェ店主・加藤さんに触発され、長野県諏訪市標高1700m霧ヶ峰富士見台にある創業53年のドライブインにお邪魔しました。

 

 長野県上諏訪駅から車で約40分、霧ヶ峰中心部から白樺湖方面に下がったところで車をとめて外に出て深呼吸。天気は晴れ。都心ではなかなか感じられない清々しいしい空気と空の広さが存分に感じられる。

 

 雄大な景色の中で何やら美味しそうなものがありそうなお店を発見。

 

 中に入ると、売店の奥にレストランが併設されている。メニューはデザートから軽食まで幅広そうだ。

 

 気さくな店員さんに案内され、美しい自然の景色を堪能できる特等席で一休み。
 店内は平日にも関わらず観光客でにぎわっている。ここに来る人々は、一体どんなことを求めてここの景色を見に来るのだろう。

オーナーの木川泉さん

 『木』『川』と来たらそこには『泉』がある、と父親から名付けられたという、まさに自然に愛された本名を持つ。今年で69歳。初めましてなのに、どうしてか昔からよく知っている関係のような話しやすい空気を纏った気さくなオーナーさん。

 

ここは景色も水も天下一品

 

 ここは本当にいい場所だよ。景色も水も天下一品。コーヒーも美味しいでしょう。

取材時にいただいたコーヒーとミルクケーキ

 お店は父がこの場所に創業してから53年経つよ。自分もここで生まれ育った。でも、50年前に一度東京に出たんだ。それから5年くらい東京で過ごした。だけど、やっぱりこの場所に戻ってきて父の跡取りとして働き始めたんだ。東京は仕事をしたり、遊んだりするにはいいかもしれないけど、長く生活することを考えたらここが一番だと思ったんだ。四季の顔を持っている素晴らしい高原。全国行ったことがあるけどやっぱりここの自然が一番だと思うね。

 

自然にありのままで

 

 うちにはリピーターのお客さんが沢山いるんだ。
 前に、日本航空の機長さんが仕事でよくこっちにくることがあって、その際はうちに必ず寄ってくれていたんだよ。そのうちに親しくなってここの景色を空から見た話を聞いたり、自然の話をしたりしたね。いつも1人で来てくれてたね。今考えると、責任感のある大変な仕事をしているから息抜きにきていたんじゃないかな。
 僕も含めて従業員はみんなお客さんとのコミュニケーションは大切にしていて、会話をよくしているね。
 人って話をするとお互い別の世界が知れるじゃない。
 若い時はけっこうカッコつけたりしてたけど、だんだん歳を重ねていくうちにカッコつけずにありのままで曝け出すっていうことが大切になってきてるって実感するね。

 

 父親は93歳になるんだけど、今でも家から30分もかけてお昼ご飯だけ食べに車で登ってくることもあるんだよ。ここにくるだけで気分が優れるからって。
 僕は動けなくなるまでここで働きたいと思っているよ。ここにはとにかく最高の景色と大好きな人達が沢山いる。
 窓の縁を額みたいにしてここから見える景色を一枚の絵画みたいに一望できるようにするのが夢なんだ。

窓からは八ヶ岳連方、富士山、南アルプス、中央アルプス、北アルプスが一望できる

霧ヶ峰富士見台店主 木川泉さんに10の質問

 

Q1)『富士見台』という地名の由来は?
—富士山がメインに見えるからと父親がつけたもの。

 

Q2)おすすめのメニューは?
—五平餅とそば、ソフトクリームもおすすめ

テレビでも取材されたことのある自慢の五平餅

Q3)オススメの席は?
—角の席。景色を一望できるから

Q4)好きな天気は?
—カラッと晴れた暑い日。やる気がみなぎるから。
 

Q5)一日のうちで好きな時間帯は?
—家族と晩酌する時間。
 

Q6)好きな色は?
—深い青
 

Q7)休日は何してる?
—仲間達とゴルフやカラオケ
 

Q8)ルーティーンにしていることは?
—朝ご飯をしっかり食べること。パワーの源。
 

Q9)山登りで大切なことは?
—自然は最高の癒しですが、とってもデリケートなので優しく触れ合うこと。
 

Q10)霧ヶ峰にくる際におすすめの季節は?
—春夏秋冬、それぞれの顔がある飽きない高原。特に好きなのは夏かな。

店内に飾ってあるポストカード、夏はニッコウキスゲの花が咲いている

  

後記

    

 

 都心から離れた、自然で囲まれたこの場所に、日々の喧騒を逃れて1人きりになって落ち着きたいという理由で訪れる人は沢山いるだろう。私もこの場所を訪れる際にそんなことを心のどこかで思っていた。
 けれど、取材が終わった後、私はすぐにスマートフォンで撮った美しい景色の写真を両親に送っていた。それくらい独り占めするにはあまりにも素晴らしい景色だったのだ。生きているうちに自分の見た景色を、同じように生きている誰かと共有しあうことがコミュニケーションの醍醐味なんだと気付かされた。
 取材中、少しも謙遜することなく、自分の生きる場所を終始誇らしげに語る木川さんからはこの土地への愛がひしひしと伝わってきた。果たして、私は「自分のいる場所が一番だ」、そう胸を張って生きていられているだろうか。そうなれたらいいと思った。
 道中の山道は険しかったが、それでもこの景色を見に行けて、ここにいる人と触れ合うことができてよかった。そう心から思える場所だった。
 ここまで読んでくれたあなたも寒い冬が終わった頃、天気のいい日に機会があればぜひこの場所を訪れてほしいと思う。店員さんたちは雄大な高原のような広い心で、あなたのことも温かく迎え入れてくれるはず。
 四季折々、山の天気は変わりやすい。次、訪れた時はどんな顔をした高原を見られるのだろう。そして、どんな大切な人を思い浮かべるのだろう。

 

 

霧ヶ峰 富士見台
長野県諏訪市大字四賀7718−8
9:30〜16:30
定休日なし(天気の悪い日は休み)
12月〜3月は天気の良い週末のみ営業

 

インタビュー&文、写真:モモコグミカンパニー