ちょっと長めのひとりごと ちょっと長めのひとりごと

絶えない音楽

 8月17日、ZOZOマリンスタジアムにELLEGARDENのライブを見に行った。
 BiSHでELLEGARDENのトリビュートアルバムに参加させてもらったことがある。その繋がりでライブのお誘いをBiSHの関係者を通じていただけたのだろう。私はBiSHの活動中もELLEGARDENの曲に無条件の生きるパワーをもらっていた。しかし、私はファンと言えるまで、ELLEGARDENの沢山の曲やその背景を知っているわけではない。そんな私が関係者枠で堂々とライブに参戦してもいいものかと最初は少し迷った。が、結局有り難く参戦させてもらうことにした。アラバキのステージで、『ジターバグ』を一緒にステージでコラボした後に、一緒に写真を撮った際に細美さんが「アイドルと一緒にステージに立つのはBiSHくらいだな」ということをおっしゃっていたのもずっと忘れられなかった。一体、彼が私たちの何を認めてくれているのだろうと気になっていたのも理由だった。
 海浜幕張駅から、スタジアムまでは歩くとまあまあ距離がある。会場まで一人迷わず辿り着けるか不安だった。しかし、私は肝心なことを忘れていた。海浜幕張駅には、会場に向かう沢山ファンが同じ方向に歩いていた。そうだ、一人で参戦だけど、一人ではないんだ、そんな気持ちになった。東京ドームを終えて以来、私にとって音楽はイヤホンから流れる一人で楽しむものでしかなくなっていたのだ。
 沢山の人についていって無事会場につき、指定された席に座る。周りには、グループできてワイワイしている人が多い。そんな中一人でじっとしていたが、ふと懐かしい顔と目があった。BiSH時代もお世話になっていた、バンドの先輩だった。「久しぶり!最近、テレビによく出てるね」そうナチュラルに話し掛けてくれて懐かしくて何だか泣きそうになる。今年の夏はフェス会場に行くことも無かった。フェスに出演の際、ケータリングエリアでポツンとしている私に、気を使って声をかけてくださっていた先輩がいたなと記憶が蘇る。バンド界隈には、こんなふうに誰も一人ぼっちにせず仲間に入れてあげる熱くて優しい空気があった。
 少しして、ライブが始まる時間になると、「今でも応援してるからね」そう言い残し、彼は席に戻っていった。畑違いになり、今後関わることのないような私にも優しくしてくれて有り難かった。
 ライブが始まり、曲が進むにつれて明るかった空はどんどんと色を変えていった。ELLEGARDENに詳しくない私にとっては知らない曲ばかりだった。けれど、自分でも驚くほど彼らの音楽や言葉、会場の一体感に胸を打たれていた。復活ライブ以降、5年ぶりにマリンスタジアムに立つという彼らのパフォーマンスは振り切れているように見えた。バンドとしての無敵感がひしひしと伝わってくる。狭まっていた視界がマリンスタジアムから突き抜ける空のように一気に広がっていく。そこから生まれた眩しいパワーは光の刄となって私の周りの闇を切り裂いてくれるようだった。
 ここ最近、私は少し塞ぎ込んでいた。何か大きな理由があったわけではない。それでも、自分中に薄暗い闇が漂っていることは事実だった。私は、その渦中で必死に明るい光を探し求めていたのだろう。しかし、私はその闇に放り込まれたわけではなかった。ただ、私は自分で周りを黒いビニールで覆い、光を遮っていただけなのかもしれないと思えてきた。
 生きていると、人はいろんな感情に染まっていく。嬉しいものもあれば、向き合うのが辛いものもある。しかし、その全てが平等に生きている証として輝いているということをこの場所で教えてもらった気がする。上手くいくことだったり、障害なく順調に進んでいくことにばかりに目を奪われてしまっていたのかもしれない。
 台風も近づき、不安定で暑い日ではあったが、ここまで自分の足で歩いてこれて良かったと思いながら会場を後にした。
 駅までの帰り道、子供連れの家族を多く見た。その小さな子供たちは、今は親の趣味に付き合わされているだけなのかもしれない。けれど、物心ついた頃にはきっと好きな音楽にELLEGARDENを挙げているだろうと想像した。
 音楽は、個人を支え、人と人とを繋げる。そして、こうやってまた人から人へ、意思を持ったまま、絶えず鳴り響いていくのだろう。