ちょっと長めのひとりごと ちょっと長めのひとりごと

ドーム、次の朝

 東京ドームでのライブが終わって、次の日の朝。まだ疲労感が残る身体を起こした。疲労はあるけど、なんだか爽やかな疲労だった。スマホには、いろんな人から誕生日よりもたくさん連絡が来ていたし、SNSにも読みきれないほどのメッセージが来ていた。
 昨日は、家に帰ってきても朝の5時ごろまで外が明るくなって鳥の鳴き声が聞こえてくる頃まで、ぼーっと起きていた。寝なければ東京ドームは終わらない、とメンバーが言っていた。私もそんな気がしていたのだ。
 ライブの後、絶対にのど飴を舐めるようにしていたけど、昨日はその習慣をやめた。次のライブに備える必要は無くなったからだ。昨日のライブでの喉に響いた痛みすら残しておきたかったのかもしれない。
 何気なくテレビをつけチャンネルを回すとハシヤスメがゲストで出ているのを見つけた。昨日も夜遅くまで一緒にいたし、聞いていなかったから一瞬目を疑ったが、思わず「すごいなぁ」と画面に呟いていた。彼女とは、東京ドームから打ち上げまでのタクシーで隣で一緒に移動した。「ライブが終わった後、雨が降ったんだって。地球が泣いてくれていたのかも」。そんなことを窓から見える空を見ながら話していた。
 昨日まではあんなに密に関わっていたのに、画面越しに見る元メンバーの姿は、昨日とはなんだか別人のようにみえて不思議な感覚だった。ああ、解散したんだな、そう思った。
 私は、昼の12時に事務所移籍の声明を自分のSNSに投稿することが決まっていた。切り替える気持ちで用意していた文章を読み直してみる。
 自分がちゃんと生きていけるのか少し心配でうっすら心細さもある。だけど、またいつもみたいにライブがあるような気もしてしまうのも正直な気持ちだった。
 今まで、本当にたくさんのライブ、たくさんの想いを受け取ってきた。その人たちの涙、笑顔はこれからも消えずに自分の中に生きていくんだ。そう考えると、これからBiSHのモモコグミカンパニーに恥じない生き方をしていきたいな、そんな自分を律してくれるような頼もしい責任感が芽生えていることに気がついた。これが、これからの自分の軸になっていくんだろう、そう思った。