ちょっと長めのひとりごと ちょっと長めのひとりごと

2024年7月9日

 2024年7月9日。
 横アリで旧BiSが解散して10年経った今日、一夜限りの再結成ライブを行うのだという。発表からすごく話題になっていて、私もどんな日になるのかワクワクしていた。
 BiSといえば、メンバーを何度か変えてモーニング娘。みたいに代々続いている息の長いグループだ。
 ただ、10年前に横アリで解散した旧BiSは私にとって少し特別な存在だった。
 軽はずみでBiSHのオーディションを受けに行き、渡辺さんに合格をもらった時、私が受かるなんてもしかして、何か騙されているのかも知れないと思い、一旦返事を保留にした。それから、自宅で渡辺さんがプロデュースしていた旧BiSを調べ、いい意味でのヤバさと独創性を感じ、「これは単なるアイドルではない」と思い、BiSHに入ろうと決意したからだ。旧BiSがいなければ、私の人生はまた違ったものになっていたかもしれない。

 ライブ会場は、歌舞伎町の広場。当日は、何人か元BiSHメンバーも行くようだったが、私は少しだけ迷っていた。旧BiSを知ったのは、解散してからで、もちろんライブも生で見たことはない。当時のBiSとファンの研究員が集まる特別な一夜に、当時リアルタイムでBiSに関わっていたわけではない私がわざわざ見に行ってもいいだろうか、私は余所者なんじゃないか、と。
 そんなことを考えて直前まで迷っていたが、やっぱりライブを人生で一度くらいは見てみたい、と会場まではとにかく足を運ぶことにした。
 蒸し暑い中、人混みを掻き分け、会場につく。関係者エリアに入ると、顔見知りばかりでなんだかタイムスリップしたような楽しい気分になった。それと同時に、渡辺さんはじめ旧BiSはこんなにたくさんの人を巻き込んでいて、私もそのうちの一人なのだと自覚した。やっぱり来てよかった、私は余所者ではないのだと安心する。
 元メンバーのMISATOちゃんが「いい場所があるよ」と関係者エリアをどんどんと奥へ進み最前に案内してくれた。確かに、研究員の気分で観戦できそうないい場所だった。
 一曲目はラストシングル『FiNAL DANCE』から始まった。
 掲げられたモニターには、当時現役だったであろう研究員の姿も映し出される。
 手作りであろうアイテムを掲げている人もいて、この日のためにたくさん用意してきたんだなと熱量が伝わってくる。
 ステージと研究員たちとのぶつかり合いでヒートアップする熱量と共に、ライブはどんどん進んでいく。化石が動き出したような、一枚の絵画が鮮明に映し出されるような不思議な光景を目の当たりにしている気分になった。
 BiSHに入る前、画面越しで見たBiSがそこにはあった。
 10年経っても変わらない音楽と、研究員たちの熱量。

 一見激しさばかりが目立つけれど、居場所を作ってくれる優しい空間。
 赤ちゃんを抱いている研究員もいた。当時と変わらない中で初めましてなんて、面白い。やっぱり時間は進んでいる。

 MCでメンバーの「よく生き抜いてきた」と研究員に発した言葉が胸に突き刺さった。
 そうだ、今日の主役はそれぞれの人生をこの瞬間まで生き抜いてきたこの場の全員。そして、BiSの音楽に触れたことのある、この場にいない全員。たとえどんな人生でも、ただ生き抜くことそのものにはこんなにも重い価値がある。

 10年なんて長くて短い。人生なんて、長くて短い。
 きっと、どんな人生にしようか、なんて考えているうちに終わってしまうんだろう。
 私は今、生き抜いている最中なんだ。
 10年経ったら、幻になるような今を、生きている最中なんだ。